Essay エッセイ
北ギリシャ エパノミのスパークリング生産者
前回のエッセイで、大事なことを書き忘れていました。
実は、マリアナへ向かう前に、大きなトラブルが起きていたのです。
それは――レンタカーのエンジンがかからない。
朝9時30分頃、ホテルを出て駐車場へ向かった私たちは、いつも通り車に乗り込み、エンジンをかけようとしました。
しかし、何度試しても動かない。
「嘘でしょ…」
そう思いながら、日本の携帯を使っている私たちは、一度Wi-Fiのあるホテル内へ戻り、スカイプでレンタカー会社に連絡を試みました。
けれど、なかなかうまくつながらず、最終的にはホテルのフロントの方に電話をお願いすることに。
エンジニアでも何でもない私たちにできることは、ただ待つことだけ。
「アポイントメントがあるのに…」
そんな焦りを感じながら、ただじっとその場で待っていました。
しばらくして、エンジニアの方が到着。
車をチェックした結果、原因はまさかの――バッテリー上がり。
「えぇ〜〜!!」
かなり古い車だったようで、「応急処置はしたけど、この後も気をつけてね」と言い残し、彼は去っていきました。
本音を言えば、「車交換してほしい…」と思いながらも、私たちはそのままアポイント先へ急ぐことに。
予定していた方々にはご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
マリアナへ向かった後、私たちはエパノミに位置するマタミスワイナリーへ向かいました。
ノスティミアでは、こちらのワイナリーのスパークリングワインを輸入しています。
・マタミス ブリュット スパークリングワイン '09 and '17

ワイナリーに向かう途中も、トラブルは続きます。
一度道を間違えたり、ポケットWi-Fiの通信制限でGoogle Mapが使えなくなったり。
それでも、なんとか無事に到着することができました。
迎えてくれたのは、兄弟でワイナリーを運営している
ステリオス・マタミスさんとヤニス・マタミスさん。
ワイン需要の高まりを受け、生産本数を増やすために新しいワイナリーを建設したばかりとのこと。
彼らにとっては大きなチャレンジの最中でした。
そして彼らの父親は、ギリシャワイン業界におけるスパークリングワインの巨匠、アポストロス・マタミス氏。
その背景もあり、彼らもスパークリングワインに強い情熱を注いでいます。
ワイナリーでは、ブドウ果汁を発酵させるステンレスタンクや、ボトリングからラベル貼りまでを行う設備を見学させていただきました。
マタミス ブリュット スパークリングワイン
このワインは、サントリーニ島産アシリティコ100%を使用し、シャンパーニュ方式で造られたヴィンテージスパークリングです。
アシリティコは、ギリシャ・サントリーニ島原産の白ブドウ品種で、ギリシャを代表する存在。
ワイナリー周辺にもアシリティコは植えられているにも関わらず、なぜサントリーニ産を使うのか。
そう質問してみると、答えはとても明確でした。
「サントリーニのアシリティコだからこそ出る酸があり、熟成に向いているから」
スパークリングワインには、甘口(sweet)から超辛口(extra brut)まで幅広いスタイルがあります。
彼らが造るBrutは、1リットルあたり12gまでの残糖が許容されるカテゴリー。
ただし、同じBrutでも、品種や造りによって感じる甘さは大きく変わります。
そこで重要になるのが「酸」。
温暖なギリシャでは、冷涼なフランスのブドウに比べて、どうしても酸が落ちやすい傾向があります。
しかし――
サントリーニのアシリティコだけは別。
非常に高い酸を持ち、しっかりとした骨格のスパークリングワインを造ることができるため、彼らはあえてサントリーニ産にこだわっているのです。
熟成についても同様で、一般的に酸が高く、凝縮感のあるワインは熟成に向いているとされています。
ノスティミアで扱っている2009年ヴィンテージも、いまだに状態は良好。
アシリティコは酸だけでなく、風味やアロマの凝縮度も高いため、長期熟成にも適している品種です。
さらに今回は、輸入はしていないものの、サントリーニ産マンディラリ種を使用したロゼ・ブリュット '13 も試飲させていただきました。
香りは、キャラメル、コーヒー豆、レザー、そしてメタリックなニュアンス。
口に含むと、クランベリー、イチゴ、ブルーベリー、チェリー。
わずかにタンニンを感じ、心地よい苦味とともに長い余韻が続きます。
とても印象的で、美味しいロゼスパークリングでした。
現時点でこのワインを輸入する予定はありませんが、
「また飲みたい」と思える一本でした。
職人気質の弟さんと、穏やかな印象のお兄さん。 対照的な二人ですが、どちらも自分たちの信念を大切にしながらワイン造りに向き合っていることが伝わってきました。
その姿勢こそが、このワイナリーのスパークリングワインの魅力につながっているのだと思います。
















ブドウの葉の生産者を訪ねて