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Essay エッセイ

さくらとこころ
第3章|広島への巡礼 ― 戦後の影と人間の尊厳

私が旅の最初に日本を選んだ理由のひとつは、広島を訪れたかったからだ。 あの町に降りかかった悲劇は、世界史上ほかに類を見ない。 民間人に対して原子爆弾を投下するという決断が、 いかなる意味を持つのか――私は信じられなかった。 あのとき、日本の降伏はすでに時間の問題だったのだ。 それでも二つの都市を消し去った。 私はそれを、人類の歴史の中で最も暗い一章だと今も思っている。

「戦争犯罪」を声高に非難する人々が、 同じ口で“人権”や“自由”を守ると言うのを聞くたびに、 私は皮肉な笑みを浮かべざるをえなかった。 広島への旅は、私にとって政治でも思想でもない――巡礼であった。

当時、東京から広島へ向かう新幹線(“ひかり号”)は、時速250キロという驚異的な速度で走っていた。 今でこそ370キロにも達するが、当時としてはまさに未来の乗り物だった。 私はリクライニングシートにもたれ、窓の外を流れる景色に見入った。
雪を冠した富士山が、完璧な円錐の姿でそびえ立ち、 その裾野には家々、工場、田んぼが次々と現れては消えていく。 静止した富士が、下界のすべてを見守るようにそこにあった。
列車がある駅に停車したとき、ひとりの乗客が私に話しかけてきた。 日本語で何かを伝えようとしていたが、私は一言も理解できなかった。 彼はもう一度、そしてもう一度繰り返したが、結果は同じ。 まわりの乗客もざわつき、やがて車掌がやって来た。 私は切符を見せた。 すると彼は前方や後方を指さしながら、必死に何かを説明している。

しばらくして、最初の男と車掌が話し合い、車掌はあきらめたように去っていった。 次の駅で、別の乗客が自分の切符を手に席を探しているのを見て、 ようやく理解した――私は指定席の車両に座っていたのだ。
日本の列車では、「指定席」と「自由席」がきっちり分かれている。 私は何も知らず、最初に空いていた席にどかりと座ってしまったのだった。 その席の持ち主に謝り、立ち上がって席を譲ろうとしたが、 彼は「ノー、ノー」と首を振り、私に座るよう促した。 異国の礼儀と優しさに、胸の奥が熱くなった。

広島に着くと、街はすでに再建を終え、 新しい命が満ちていた。 だが、一つだけ、当時のままの建物が残されていた。 爆心地近くに立つ、原爆ドーム。 崩れ落ちた鉄骨とレンガが、そのまま時を止めたように佇んでいた。
静まり返った空気の中に立ち、私は言葉を失った。 ここには、怒りも悲しみも、すべてを超えた“沈黙”があった。 その沈黙が、何より雄弁に語っていた。

この旅の記録を綴る目的は、政治的な意見や社会的な主張ではない。 ただ、自分の経験を素直に伝えたいだけだ。 だが、人類の歴史を変えた出来事に触れれば、 戦争の意味、そして人間という存在そのものを考えずにはいられない。

私が直面した最大の問題は、やはり言葉の壁だった。 日本語という言語は、三つの文字体系を持ち、 合わせて二万五千字以上の文字を使うという。 (聞くところによれば、千五百字を覚えれば日常会話ができるらしい。)
最初のうちは、身振り手振りで何とかしようとした。 しかし、日本人のジェスチャーは私の想像とまったく違っていた。 絵で説明しようとしても、私は“両手が左手”のように不器用で、 うまく描けなかった。 最も単純な質問でさえ、まるで出口のない迷路を歩くようなものだった。

食事も、最初のうちは苦労した。 何が何だか分からず、メニューを読めない。 それでも私は心に決めた―― 「どんな料理でも、一度は食べてみよう」と。 春の終わり、梅雨の季節が始まると、 日本は雨と湿気に包まれた。 空気は重く、体にまとわりつくようで、 観光どころではなかった。 屋外の名所も多く、何より知人がいない。 孤独と退屈が混じり合ったその頃、 私はある日、映画館へ行ってみようと思い立った。

サイン

有限会社ノスティミア
A. Fragkis



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