Essay エッセイ
汚れなき山頂

普通の人にギリシャと言えば、島々と青い海、パルテノン、哲学、バケーション、そして陽気さを連想するでしょう。山を思い浮かべる人は多くないはずです。 しかしギリシャにはヨーロッパで最も高く美しく、汚れていない山々のいくつかがあります。ギリシャを山の本場と呼んでもいいくらいです、国土の5分の4は山地なのですから。 魅惑的な森林、湖、岩肌が、いかなる形の人間の介入も受けていない手つかずの魅力をあえて探訪しようとする冒険家たちを待ち受けています。
冬の間??春が来て空気中に漂う水分を蒸発させ、壮麗な自然美がみずみずしく洗い清められて現れてくるまでは、霧がその象徴であると言ってもいいような場所がこの明るい陽光の国にあるのです。 さまざまな言語の休暇パンフを通じて世界的に知られている乾いたギリシャの島々の白く洗われた家々のイメージは、さらに誤解を招きやすいかもしれません。 国の総面積の49.3%は森林におおわれているのですから。
雪に覆われたオリンポス山は最高峰であり、ギリシャ文明のシンボルです。何世紀にも渡ってマケドニアとテッサリアの間の防壁としてそびえていました。 テッサリアの平地を絵のようなピエリア海岸とテルマイコス湾から隔てていたのです。 ギリシャ人は神々がこの山頂にいるものとし、ミューズたちの住みかや無数の物語や神話の舞台をその森と考えました。これは偶然ではありません。 自然美、霧の立ちこめた神秘的な雰囲気、頂上へ到達することの難しさ、多様な動植物相、風景の汚れなさのために、オリンポスは神々にふさわしい地となったのです。 聖なる山の陰には幹線道路のネットワークからはずれ、時に忘れ去られた大小の村が幾多もあり、幸福でもてなし上手な人々が住んでいます。
ギリシャの中心部エブリタニア県はたいへん高い山々、清冽な河川、絵のような村々、そしてカーペニシというとても美しい県都を擁し、チフリノス山の麓に広がっています。 北東にはロドフィ山脈があります。ギリシャの他のどこにも比肩するもののない手つかずの自然、近づきにくく荒らされていない山脈で、野鳥や野生の動物の圧倒的に美しい光景で満ち満ちています。 1万平方キロあまりの原生林は、ヨーロッパでは他にありません。
とてつもなく美しいもう一つの地域はテッサリアのトリカラ県の山地帯です。 中央ギリシャのパルナッソス山とペロポネソス半島のタイゲトゥス、その他数多くの山々が国中にくまなく広がっているのです。すべて過ぎ去った長いギリシャの歴史の永遠の証人たちです。 岩の一つ一つに物語があり、流れの一つ一つが伝説を持っています。ニンフやフェアリー、ケンタウロスやサテュロス、ギリシャ神話のあらゆる登場者たちが森林に住んでいます。
山を愛する人々にはギリシャは天国です! それらはそこに壮麗に神秘的にそびえています??何千年間も訪れようとする人を圧倒的な寛大さで報いようと待ちうけながら。 それらはそこにそびえています??その斜面に特徴的に育つ何百種もの植物の守護役として。 そこには世界の「文明化された部分」では、悲しいことに失われてしまった無数の鳥や動物たちが生息しているのです。

有限会社ノスティミア
A. Fragkis